大瀧詠一 - ALONG VACATION (1981)
つい先日、40周年を記念したアルバムが発売された本作。後払いにしたらAmazonから蹴り出しを食らってしまったけれど、初発のLPは購入していたので良いとする。
大瀧詠一は幼い頃からなんだかんだ聞いている人が多い。毎年と言っていいほど、どこかの会社がCMソングとして起用するほど王道のアーティストである。ほとんど " 君は天然色 " だけれど。(私もその一人)
高校の頃に友人のツテで Velvet Motel を聴く機会があり、自分の中で一躍ブームになった。冬生まれだが夏が好きな私にとって、のこまでストライクに夏を歌い上げているアーティストの存在は大きかった。ニュース報道で彼の訃報を聴いた時はそこまで陶酔していなかった為、インパクトはとても薄かったのだが、今となっては痛い。貴重な財産を失ったような気持ちが拭えない。ここまで自分の世界観に固執して音楽業界を邁進していたのは彼くらいであろう。
80年代ともなればシンセなどの電子楽器が波及し、打ち込みが主流となっていた時代である。その時代の波に流されることなく、生演奏にこだわっていた。ひとつのスタジオに楽器隊をギュウギュウに押し込み、一日掛けてレコーディングを行うという手法。これが後に " ナイアガラサウンド " という異名を持つ訳だが、アーティスト側の負担も大きくプロデューサー陣にはかなり訝しがられていたとか。ここで終わりかと思えば、ボーカルにも熱を入れ始めるのだから、ひとつのアルバムを完成させるのに費やしていた労力は計り知れない。
夏という季節も、気候から自然環境、生ける物達によって構成されるように、彼も音楽をそうして緻密に構成していたと言えよう。A面B面、永遠と続くクルーナーなユニゾン。復刻版も即完売が頷けるクオリティである。
大瀧詠一の歌もさることながら、忘れてならないのは松本隆の歌詞である。君は天然色に書かれた
思い出はモノクローム
色を付けてくれ
の一節。初見の人間には麗しい恋愛ソングとしか取れないものだが、これは松本隆が自身の妹に当てたメッセージだそうだ。
若くして最愛の妹を亡くした松本隆は、目の前から色彩が消えていくという事態に陥ったそうである。そんな最中舞い込んできたロンバケの話。ここに彼は大々的なメッセージを残したのである。流石、ノンフィクションが大きく絡んでいるとだけあって、完全なる夢物語に感じない、単調な創作物には無い深みがここにある。
松本隆が書き、大瀧詠一が歌う。この構図に大きな意味があった。現に大瀧詠一が単独で手掛けた楽曲の売れ行きは芳しいものとは言えなかった。やはり、松本の存在あっての大瀧詠一であり、二人がいたことによるロンバケだったというわけである。
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