流線形 - TOKYO SNIPER (2006)

2006年リリース。現在持っているレコードの中で一番新しいのだが、もう15年経っていることに絶句。
シティミュージックを漁っている最中に出会ったこのアルバム、ヤフオクで2万円だった。LP盤に2万かける、となると当初はかなり迷ってサブスクで我慢していたのだけれど、一十三十一のコケティッシュな歌声に惚れ、一ヶ月間の迷いを経て購入。寒空に揺れていた桜の枝木も、購入に着手した時には花をつけていた。
冬が嫌いで、聴くと感傷的になる曲などは尚のこと嫌いだった自分が人生で初めてインパクトを受けたのがA面のトリを飾る " 薄紫色の彼方 " だった。なんとも言えない哀愁が漂うイントロから始まり、一十三十一の美声が光る、

貴方と 私の間は ただの友達だと

今分かったの


という歌詞が切なすぎて、歌詞の意を噛み締めながらしこたま聴いた。最終便に乗りながら薄紫色の空を見つめる私はどのような気持ちで空を見つめているのだろうかということまで考えるほど、深く滲んだ世界が読み取れる。

タイムマシーン・ラヴ、恋のラストナンバー、花びら、も個人的に好みである。平成に作られたとだけあって、少しリアリズムを増したアーバンテイストが伝わってきてとても良い。麗しくて切ない歌詞をここまで綺麗に歌い上げる彼女も彼女だけど、音色も素晴らしい、特にリズム隊が最強。

ジャケットも、夜のしじまに漂う寒色と生きた人間による暖色の対照性が相まってとても綺麗に見えた。レコードに針を落としながら、このジャケットを飾る瞬間が何より好きだ。

総評として、2万円払う価値のあるアルバムだと思う。その気持ち故に、2日に1度はターンテーブルに乗っている。先述にもあるように冬が嫌いだった。けれども、このアルバムを聴きながら人を待つ夜を幾度と無く繰り返しているうちに冬も悪くないとさえ思えたから、結果としてだけれど、冬が好きだ。好きになったと言った方が正しいか。ありがとう流線形。音楽を通して何かを受け取れるアルバムでした。


私のレコード録

空蝉 夏目 と 惰眠 というペンネームで小説やエッセイを書いたり、フィルムカメラを嗜んでいます。2000年生まれの人間から見た昭和曲を、ヴァイナル盤を通して書き綴っていきます。

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