死ぬのは嫌だ、恐い。戦争反対! (1981)

4月にブログを立ち上げてから、レコードの枚数は増えに増えた。しかしながらレビューを書く気持ちがなかなかに起きずに4ヶ月の空白が生まれる。この間にだいぶ世相も、自身の生活も変わっていることに気付かされる。

YMO、桑原茂一、伊武雅刀、小林克也 というビッグネームが揃いに揃って制作されたこちらのアルバム。1980年当時まだ根強かった反戦運動に倣い、「スネークマンショー」としてのワールドが展開された。海賊版などは林家三平のパロディであったり、各業界のオマージュが細かく用いられたものばかりなのだが、如何せんこのアルバムはエロティシズムの強い、笑いと皮肉で構成されたものであり、集団で挙って聴くようなものでは無い。発売当時、10代の子供であった人々も家族に取り上げられた事例がレビューに数多く報告されていた。とにかく過激が過ぎる。

レコードを収集し始めた昨年頃、ディスカウントショップに寄った際に何気無く手に取り、収集したアナログ盤の中で唯一、ターンテーブルに乗せていなかった。レビューの内容を見るに、くだらないと言う決めつけが為されていた為である。
ほんの気まぐれでターンテーブルに乗せることになったのは収集に着手してから一年後のことだった。この出来事がかなりセンセーショナルで心突き動かされるものだったので、こうして半年ぶりくらいにブログを開く。ひとつ、事前に断りを入れておきたいのが、一曲に対してしかレビューを書かないということ。その曲が、高橋幸宏作曲の 「今日、恋が」についてである。他の寸劇については、各人で受け取り方が大きく変わってくることを承知しているので、あまり触れない。

ティンパニやストリングスによって構成されるオーケストラ的な風向きで、この曲は始まりを迎える。B面の3曲目。ユキヒロもこんな曲を作るのかと目を見張った…いや、耳??
数ターンのこの流れが終わると、急に嫋やかなインストミュージックが開放される。ユキヒロの鼻歌をもとに教授が鍵盤を弾いて構築した一曲と言われているが、流石一時代を築いた超絶技巧者が作曲しているとあって、世界観の作り込みが精緻なものになっている。" 恋 " というダイレクトなワードに似つかわしい曲想が続くのが大変に素晴らしい。今日、恋が始まるのか、終わるのか。個人的な所見としては後者のように聴こえる。ストリングスの哀愁が、失恋という名を与えるに相応しい。恐らく聴くタイミングを間違えると、泣いてしまうと思う。ユキヒロの甘いコーラスが、ずっと耳について離れない。

これまで 70's や 80's のロック、ポップ、テクノ、ジャズを短期間でしこたま聴いてきたが、ここまでインパクトを感じる楽曲は無い。有難いことにサブスクにも投入されている一曲なので、飽きるまで聴くことにしている。アナログ盤として聴く上でも、数有るネタや楽曲をすっ飛ばして この曲を永遠に聴いている。

発売当時はジャケットが赤色の十字であったようだが、赤十字社から手痛いバッシングを受けたそうで、途中から金十字に差し替えられた、というエピソードが個人的にとても好きだ。

私のレコード録

空蝉 夏目 と 惰眠 というペンネームで小説やエッセイを書いたり、フィルムカメラを嗜んでいます。2000年生まれの人間から見た昭和曲を、ヴァイナル盤を通して書き綴っていきます。

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